2020年度の将棋大賞名局賞・升田幸三賞の投票受付が開始された。
https://www.shogi.or.jp/form/event/2715.html
私も観る将のはしくれとして、ずばり予想してみたい。今回は名局賞について。
名局賞を選出するにあたり、個人的には以下の3要素が重要だと考える。
1.対局の重要性、注目度
2.将棋の内容
3.その他(手数、持ち時間)
まず1.について。
過去の名局賞はすべてタイトル戦、またはA級最終局・ラス前から選出されており、今後もこの流れは変わらないと考える。
言い換えると、朝日杯の準決勝・決勝については、内容としては名局賞に値すると思うが、タイトル戦ではないため受賞の可能性は限りなく低いと思われる。(名局賞特別賞を受賞する可能性はある)
次に2.について。
「名局賞」と呼ぶからには、両対局者の持ち味が発揮された上で、終盤まで形勢不明、あるいは終盤で形勢が二転三転する内容が望ましい。
具体的には、藤井聡太先生の3一銀が話題になった棋聖戦第2局は、渡辺先生の見せ場が少なく、名局賞かと言われると疑問符が付く。
最後に3.について。
これは副次的な要素かつ個人的な好みの問題であるが、やっぱり手数は短いより長い方が良いし、持ち時間を余らせての終局よりも両者1分将棋の方が良いよね、ということである。
これらの3要素を踏まえて、私が予想する名局賞候補は以下の通り。(肩書は当時)
本命:棋聖戦第1局 藤井七段○-渡辺棋聖●
本命に挙げる最大の理由は、終局図のインパクト、美しさである。私のような級位者の観る将は、対局者を伏せて局面だけ見せられても、何の対局か普通は思い出せない。ただ本局に関しては、渡辺棋聖の王手ラッシュを藤井七段が逆王手で凌いだ手はインパクト抜群で、私が今年唯一思い出せる終局図である。また藤井現二冠にとっての初のタイトル局ということで、対局の注目度としても申し分ない。
強いてマイナス面を挙げるとすれば、終始形勢は互角~藤井有利というところで、形勢の揺れという点で物足りない面があるかもしれない。
対抗:王座戦第4局 久保九段○-永瀬王座●
内容の濃密さで言えば上記の棋聖戦を凌ぐ名局。最終盤、永瀬王座の寄せが刺さったと思われたところから、久保九段の粘り強い銀打ちの受けをきっかけに形勢が逆転。手数201手という死闘であった。
マイナス面は特に思い当たらないが、私自身が日経新聞に掲載された本局の観戦記を読んでいるため、本局を過大評価している可能性がある。
穴:叡王戦第4局 豊島竜王名人●-永瀬叡王○
手数は上記の王座戦を超える232手。またこの第5期叡王戦全体が、4勝3敗2持将棋1千日手という激闘であったため、名局賞もこの叡王戦から選出したいという思惑は考えられる。
マイナス面としては、持ち時間が1時間とタイトル戦にしては短い点(これは叡王戦のレギュレーションの問題なので仕方ないが…)と、若干豊島竜王名人が決め損ねたという印象が強い点だろうか。
というわけで、現時点での私の予想は、「棋聖戦第1局 藤井七段-渡辺棋聖」とさせていただく。
次回は升田幸三賞を予想する予定。
将棋ウォーズ初段、将棋クエスト1級の級位者。負けるとストレスが溜まることに気づき、現在は主に観る将として活動中。